日本には、数多くの音楽番組が存在していますが、その中にはすでに終わってしまったものも少なくありません。音楽番組は、視聴者の嗜好を踏まえて、時代とともに少しずつ変化を遂げているため、同じ番組が長期間にわたって高視聴率を取り続けることは必ずしも容易ではないからです。ここでは、昭和から令和に至るまでの、各時代の音楽番組の特徴を見ていくことにします。
昭和の音楽番組の特徴
昭和40年代の中ごろまでの音楽番組は、基本的に演歌や歌謡曲が中心のライブ放送であり、当時台頭しつつあったニューミュージックのミュージシャンが登場するケースはほとんどありませんでした。このような風潮に風穴を開けたのが、1968年に放送がスタートした「夜のヒットスタジオ」です。この番組は、生演奏とフルコーラスにこだわって制作されており、アイドル歌手や演歌歌手に加えて、それまでテレビ出演に消極的だったニューミュージックやロック系のアーティストが出演したこともあり、お茶の間の人気を博しました。また、人気俳優や海外のアーティストなども出演させたことで、音楽バラエティとしての地位を確固たるものにしたのです。このスタイルは長きにわたって支持され続け、番組は実に22年間も存続しました。
また、この時代には、「ザ・ベストテン」や「ザ・トップテン/歌のトップテン」といった、ランキングを用いてミュージシャンを紹介する番組も登場しました。特に、ザ・ベストテンは、ランキングに入ったミュージシャンをリアルタイムで出演させるべく、時には地方にスタッフを派遣して現地から中継するといった思い切った制作方法が取り入れられました。生放送だけに、ハプニングが起こるケースも多くありましたが、それが視聴者に受けて41.9パーセントという最高視聴率を記録したのです。
平成の音楽番組の特徴
平成に入ると、J-POPが爆発的な人気となり、それに伴って旬のアーティストを招いて歌だけでなく、トークやゲームなどを行うスタイルの番組が登場します。それらと入れ替わるかのように、昭和に人気を集めた「夜のヒットスタジオ」や「ザ・ベストテン」などは平成の初めに次々と姿を消していきました。この時代を代表する音楽番組としては、「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」や「うたばん」などがあります。昭和の音楽番組ではアナウンサーが司会を務めるケースが少なくありませんでしたが、これらの番組では芸人などが司会を務めており、よりバラエティ色が濃くなっています。番組から生まれた音楽ユニットがミリオンセラーを獲得するといった出来事が起きたのもこの時代ならではといえるでしょう。なお、カウントダウンTVに見られるように、ランキング形式の番組も全く無くなってしまったわけではありません。
昭和から令和まで変わらぬスタイルを貫く音楽番組
音楽番組の中には、昭和から令和に至るまでそのスタイルを維持しながら放送を続けているものもわずかながら存在します。そのうちの一つが、昭和の終わり頃の1986年にスタートしたミュージックステーションです。この番組では、短いながらも司会者とミュージシャンがトークを行う時間が設けられており、平成以降の音楽番組の特徴を先取りする形になっていました。それが時代が変わっても人気が衰えることなく、令和に至るまで放送が続いている理由の一つになっているのではないでしょうか。また、大晦日の紅白歌合戦も、昭和から令和まで一貫して放送されている音楽番組です。こちらは、時代に合わせて毎回少しずつそのスタイルを変えてきていますが、年末の風物詩となっているだけに、簡単に終わることはないでしょう。
音楽番組は時代を映し出す鏡
以上で見てきたように、一言で音楽番組といっても、時代とともにその特徴は異なります。中には、ミュージックステーションや紅白歌合戦のように、時代を超えて愛されているような番組もありますが、多くはそうではありません。番組のスタイルや出演していたアーティストを見れば、放送されていた時代がおぼろげながら見えてくるはずです。