CDが売れずに、TSUTAYAやタワーレコードが閉店する理由

音楽と日常

「CDが売れない時代」と呼ばれるようになって、かなりの時間が経っています。タワーレコードやHMVといった大型CDショップすら、閉店したり規模を縮小したりするようになりました。その背景には、音楽業界全体の大きな変革があります。21世紀に入り、音楽とリスナーと販売店の関係が再構築されているといえるでしょう。この記事では、CDが売れない理由について考察していきます。

iPodの登場で本格的な「CDが売れない」時代に突入

そもそも、1990年代から2000年代初頭にかけて、TSUTAYAなどのレンタルCDや違法ダウンロードサイト、Youtubeなどによって、CDビジネスは脅かされていました。そして、本格的に「CDが売れない時代」へと突入したのは、iPodの登場以降だといえます。この段落では、iPodの影響について解説します。

音楽のダウンロードを当たり前にしたiPod

Appleが2001年に発表したデジタルオーディオプレイヤー、iPodは2004年の第4世代あたりから一般に浸透し始めました。iPodは容量がCDをはるかに超えていただけでなく、コンパクトなデザインや操作性でも従来のオーディオプレイヤーを上回っていました。iPodは音楽のダウンロードサイト、iTunesと連携していたのも特徴です。これにより、リスナーはiTunesから曲単位で音楽をダウンロードし、iPodで管理、鑑賞をできるようになりました。

U2の象徴的な事件

iPodの宣伝戦略の特徴として、有名アーティストとのコラボレーションが挙げられます。その中でもインパクトを残したのは、2014年9月、ロックバンドU2が新作アルバムをiTunesに無料配信したことでした。この試みは賛否両論を招いたものの、世界的なロックスターが自身のアルバムを無料でリスナーに配ったことは、新しい時代を象徴していたといえます。すでに自覚的なアーティストはCDから配信の世界に主眼を置くようになっており、タワーレコードなどのショップは規模を縮小しつつありました。

サブスク時代で音楽業界はどう変わったのか?

そもそもサブスクとは「サブスクリプション」の略であり、定額制のサービスを意味する言葉です。この段落では、サブスクの時代について解説します。

Apple MusicとSpotify

まず、Appleが「Apple Music」を開設したのが2015年です。この頃は競合がほとんどいなかったこともあり、Apple Musicがサブスクビジネスを独走していました。しかし、Amazon Music HDやmora qualitasといった同種のサービスが徐々に台頭し始めます。その中でも、無料サービスのSpotifyの躍進はすさまじく、2022年2月時点では業界最大手のサービスとなっています。Spotifyはプレミアム会員向けの有料サービスがあるものの、基本的には無料で時間制限もなく全コンテンツを利用可能です。

次々にサブスク配信を始めるミュージシャンたち

Spotifyの成長により、当初は難色を示していたベテランのアーティストたちも、次々にサブスク配信を解禁していきます。さらに、2010年代以降のラップミュージックの隆盛も、サブスクとの相性が抜群でした。ラップミュージックは1曲あたりの時間が短く、リリースのペースも早いので、手軽に配信できるサブスクを好んで活用するアーティストが増えたのです。こうした時流にリスナーも迎合し、2010年代終盤からは音楽業界の中心がサブスクに移行します。つまり、マーケティングの規模として、CDの巻き返しが非常に難しくなってしまったのです。

リスナーの生活様式もCDから遠ざかっていくように

音楽業界だけでなく、リスナーの生活様式もCDから遠ざかりつつあります。以下、リスナーの変化を解説していきます。

インターネットの流通による影響

90年代まではインターネット以上にテレビやラジオが影響力を持っている時代でした。ラジオでヘビーローテーションされたり、人気のテレビ番組の主題歌になったりすると、CDが100万枚以上のセールスを記録することも珍しくなかったのです。しかし、21世紀に入りインターネットが流通し、リスナーの情報源が増えていきます。自ら好きな音楽を探し、買い求めるリスナーが一般的になりました。やがて、「マスメディアで取り上げられたCDが売れる」という現象は以前ほど起こらなくなります。そして、「情報にたどり着いたらすぐ聴ける」という点で、動画サイトやサブスクサービスが重宝されるようになったのです。

CDのデメリットが露わに

サブスクが当たり前になってくると、これまでは顕在化しなかったCDのデメリットも露わになっていきました。まず、CDは高額です。1枚3000円前後のアルバムは、ダウンロードに慣れた世代にとっては手を出しにくい商品です。次に、CDは収納スペースを占めます。掃除や整理が面倒で、聴かなくなった後の処理にも手間がかかります。そのほか、わずかながら「音質にこだわるならCDよりもアナログレコードの方がいい」という音楽ファンも現れるようになりました。CDのデメリットが注目されるようになった時代では、ますますその売上は回復しにくいといえるでしょう。

サブスクの時代でもCDは生き残っていけるのか?

特典付きの商品やよほどの人気アーティストの作品を除き、CDはかつてほどの売上を記録できなくなっています。音楽のヒットチャートもCD売上ではなくダウンロード数やサブスクの再生回数で集計されることが増えてきました。そのためCDショップ・レンタルCD店の閉店は時代の流れなのかもしれません。それでもCDという形態に愛着を持っているリスナー、アーティストも根強く残っているためCDがすぐ消えてしまうわけでもないでしょう。

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