【老舗通販の軌跡】ニッセンの歴史|カタログの女王からネット通販再生への挑戦まで

はじめに:ニッセンとはどんな企業?

「ニッセン(NISSEN)」といえば、かつて全国の家庭に届いていた分厚いカタログを思い出す方も多いのではないでしょうか。婦人服やインテリア、生活雑貨まで幅広く取り扱い、「カタログ通販の代名詞」として一時代を築いた企業です。

しかし時代の流れとともにカタログ通販市場は縮小し、ニッセンも大きな経営の転換を迫られることになります。本記事では、ニッセンの創業から黄金期、そして再生への歩みを詳しく解説していきます。

創業:ニッセンのルーツは京都の繊維卸

ニッセンのルーツは、1957年に京都市で設立された「日仙産業株式会社」です。社名の「ニッセン」はこの「日仙(にっせん)」に由来しています。

創業当初は、呉服や繊維製品の卸売を中心としたビジネスでしたが、時代の流れとともに個人向け通販の可能性に目を付けます。

1970年代:通販ビジネスへの本格参入

1970年代に入り、ニッセンは一般家庭向けのカタログ販売を本格的にスタート。当初は主婦向けの婦人服や子供服を中心とした商品展開でした。

この頃から「無料でカタログを配布」する仕組みを取り入れ、多くの家庭に広まりました。シンプルで見やすく、商品の価格が手ごろであったことが支持され、「主婦の味方」として全国的に知名度を伸ばしていきます。

1980~90年代:黄金期と「通販の女王」への躍進

1980~90年代にかけて、ニッセンはまさに黄金時代を迎えます。分厚いカタログは、季節ごとにリリースされ、服だけでなく寝具・家具・健康グッズ・化粧品など商品ラインナップを急拡大。

1990年には、年商約1800億円を記録し、通販業界のリーディングカンパニーとして君臨します。

テレビCMとブランド力

「ニッセン♪」という軽快なジングルが印象的なCMで、テレビと紙メディアの融合型プロモーションにも成功。当時の日本において、通販を「便利でおしゃれ」なものとして浸透させた立役者のひとつといえるでしょう。

2000年代:インターネット通販への挑戦

2000年代に入り、インターネットの普及とともにオンライン通販市場が急成長します。ニッセンも公式ECサイトを開設し、Webへの移行を図ります。

しかし、楽天市場・Amazon・ZOZOTOWNなどの後発プラットフォームが台頭し、紙中心の事業モデルに限界が見え始めます。

EC化の課題

ニッセンはEC対応を進めたものの、システム面・物流面・商品展開の柔軟性などで課題を抱え、インターネット通販への完全移行には遅れをとりました。この頃から業績が悪化し、構造改革が求められるようになります。

2014年:セブン&アイ・ホールディングス傘下に

経営再建を目指すニッセンは、2014年にセブン&アイHDの完全子会社となります。セブン&アイは、グループのオムニチャネル戦略(実店舗とネットの融合)の一環としてニッセンを取り込みました。

しかし、シナジー効果は思うように発揮されず、2017年にはグループ戦略から外れ、再び独自の再建路線を歩むことになります。

近年のニッセン:EC再強化とターゲット戦略の転換

ペルソナの明確化と再ブランディング

現在のニッセンは、主に40代〜60代女性を中心ターゲットとし、体型別やシニア向けの機能服など、実用性とサイズ展開に特化した商品を多数展開しています。

また、「ゆったりサイズ」「小柄サイズ」「高身長対応」など、多様化するユーザー層に寄り添う商品展開が評価されています。

アウトレット・セール戦略の強化

コストパフォーマンスの高さを武器に、期間限定セールやクーポン配布、定期便(定期購入)なども取り入れ、通販慣れした中高年層を軸に売上回復を図っています。

ニッセンの現在(2025年時点)

企業情報(概要)

  • 正式名称:株式会社ニッセンホールディングス
  • 本社所在地:京都市南区
  • 創業:1957年
  • 事業内容:アパレル通販、家具・生活用品、保険代理店事業など

EC比率の大幅増加

2020年代以降は、売上の約7割以上がオンライン経由となり、完全にデジタル主軸の企業へとシフトしています。

まとめ:ニッセンの歴史は変化への対応の連続だった

  • 1957年、京都の繊維商社としてスタート
  • 1970年代にカタログ通販を開始し、90年代に黄金期を迎える
  • 2000年代にEC化へ挑戦するも、競合に遅れ
  • セブン&アイHD傘下を経て、現在は独自路線で再構築中

紙の時代からネットの時代へ――その変化に対応しながら、今もニッセンは日本の通販業界を支え続けています。老舗ならではの信頼感と、地道な商品改良・サービス力で、再び脚光を浴びる日も遠くないかもしれません。

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