「生活保護=ずるい人がもらってる」
そんな誤解や偏見が一部で広がっています。
果たして、生活保護の不正受給は本当に多いのでしょうか?
この記事では、不正受給の割合や実例、逮捕された事件、行政の対応などをデータとともに詳しく解説します。
生活保護の不正受給とは?
生活保護の不正受給とは、本来の支給条件を満たしていないにもかかわらず、虚偽申告や収入の隠蔽などにより不正に受給する行為を指します。
主な不正受給のパターン
- 収入の未申告(アルバイト・年金・仕送りなど)
- 扶養義務者からの援助を隠す
- 資産の隠蔽(預金・不動産・車など)
- 同居人の虚偽申告(実際は家族と暮らしている)
- 死亡後の不正受給(親族による受給継続など)
不正受給の割合は?数字で見る現実
「不正受給が多すぎる!」という声もありますが、実際の統計を見るとそのイメージとは異なる結果が出ています。
厚生労働省の公表データ(最新:2022年度)
生活保護受給世帯数(年平均) | 約161万世帯 |
---|---|
不正受給件数 | 約3万1,000件 |
不正受給の割合 | 約1.9% |
不正受給金額合計 | 約133億円 |
つまり、98%以上の受給者は正当に保護を受けています。
不正受給は確かに存在しますが、決して多数派ではありません。むしろ、多くの受給者は「最低限の生活」に耐えながら、真面目に制度を利用しているのが実情です。
実際にあった不正受給の逮捕事例
① 大阪市の元暴力団幹部による不正受給(2023年)
- 収入・車・複数の口座を隠して生活保護を申請
- 約5年間で900万円超を不正受給
- 詐欺罪で逮捕 → 懲役1年6か月、執行猶予付き判決
② 名古屋市の高齢女性(2022年)
- 年金収入を隠し、10年間で約1,200万円を不正受給
- 市から返還請求 → 民事訴訟に発展
③ 死亡後の不正受給(福岡県・2021年)
- 同居していた母親の死亡を隠し、死亡後も約1年間受給
- 不正受給額:約160万円
- 詐欺罪で子どもが逮捕
不正を防ぐ仕組みとチェック体制
行政側も、不正を防ぐためにさまざまな監視体制を敷いています。
① ケースワーカーの訪問調査
定期的な家庭訪問で、生活実態や収入状況を確認します。
② 収入報告の義務
受給者は月ごとの収入を報告する義務があります。未申告や虚偽記載は不正に該当します。
③ マイナンバー連携による監視
マイナンバー制度の導入により、税務・年金・収入との照合がしやすくなりました。
④ 金融機関への照会
必要に応じて、預金残高や入出金履歴が行政によって確認されます(生活保護法第29条)。
不正受給者へのペナルティ
- ① 全額返還請求(悪質な場合は延滞金付き)
- ② 刑事罰(詐欺罪:懲役10年以下・罰金)
- ③ 信用情報への傷(公的支援・ローン不可)
- ④ 将来の再申請時の影響(通りにくくなる)
悪質と判断された場合は、詐欺罪として立件・逮捕される可能性が高いです。
「不正受給=生活保護制度の問題」ではない
一部の不正がメディアで大きく報道されることで、「生活保護=ずるい人がもらう制度」という偏見が広がってしまう傾向があります。
しかし現実には、多くの受給者は病気や失業、障害、DV被害、高齢などやむを得ない事情を抱えています。
制度に問題があるとすれば、「不正の温床になりやすい仕組み」ではなく、「支援を本当に必要としている人に届きづらい壁」の存在でしょう。
海外と比較した日本の生活保護制度
国名 | 生活保護の支給額(単身者) | 特徴 |
---|---|---|
日本 | 月約78,000円〜(地域差あり) | 審査が厳しく、社会的偏見が強い |
ドイツ | 月約97,000円相当 | 申請が簡易/住宅支援も手厚い |
イギリス | 週約8,000円(Universal Credit) | オンライン申請可/生活費に加えて就労支援あり |
日本の生活保護制度は、国際的にも「支給額が少なく、利用しづらい制度」といわれています。
まとめ|不正受給はごく一部、制度の本質を見失わないで
- 生活保護の不正受給率は全体の約2%以下
- 多くの人が正当に制度を利用している
- 悪質な不正には厳しいペナルティと監視体制あり
- 制度への偏見よりも、支援が届く社会設計が必要
「ずるい人が得をしている」と思うよりも、「必要な人が適切に支援を受けられる社会」こそが健全な在り方です。
メディアの一部報道だけに流されず、正しいデータと仕組みに基づいた判断をしていきましょう。