「年金だけでは生活できない。でも生活保護は恥ずかしい…」
そう悩む高齢者は年々増加しています。
この記事では、年金と生活保護の関係、受給の実情、誤解されやすい点、そして高齢期の“安心な選択肢”としての生活保護について、丁寧に解説します。
年金だけで暮らすのは厳しい現実
実際の年金受給額(令和4年度データ/厚生労働省)
年金の種類 | 平均月額 |
---|---|
国民年金(老齢基礎年金) | 約56,000円 |
厚生年金(男性) | 約167,000円 |
厚生年金(女性) | 約106,000円 |
一人暮らしの高齢者の生活費(家賃・光熱費・食費・医療費など)を考えると、年金だけで十分な生活を送ることが難しい高齢者が多いことがわかります。
高齢者の生活保護受給者数は増加中
厚生労働省の統計によると、2022年度時点での生活保護受給者は約201万人。そのうち高齢者(65歳以上)は、約92万人(全体の46%)を占めています。
特に単身高齢者では、以下のような理由で保護を受けるケースが目立ちます:
- 年金額が月6〜7万円以下で生活困難
- 配偶者と死別・離婚し、収入が途絶えた
- 病気や障害で医療費の負担が大きい
- 家族との断絶により援助が期待できない
今や高齢者の生活保護は「特別なこと」ではなく、「制度として当然の選択肢」になりつつあります。
生活保護は「年金受給者でも受けられる」
年金を受け取っていても、それだけで生活保護を受けられないというわけではありません。
条件
- 年金を含むすべての収入が「最低生活費」を下回っている
- 預金や資産がない
- 扶養義務者(家族)から援助を受けられない
この条件を満たせば、年金+生活保護という形で受給が可能です。
受給例(東京都23区・70代単身者)
- 最低生活費(生活扶助+住宅扶助):約130,000円
- 年金:65,000円/月
- 生活保護支給額:約65,000円(差額支給)
このように、足りない分だけ支給される仕組みです。
「恥ずかしい」「周囲に知られたくない」という声に
高齢者が生活保護の利用をためらう理由の多くは、世間体・偏見・制度への誤解です。
「ご近所に知られたくない」「親として子に頼れないと思われそう」
「役所に行くのが怖い。生活保護=貧困というイメージがある」
→ 実際には…
- 生活保護の情報は第三者に知らされない(守秘義務)
- ケースワーカーは本人のプライバシーに配慮して訪問・対応
- 受給しても選挙権・住民票・年金などの権利は保持
「恥」ではなく「権利」として、制度を正しく使うことが求められています。
高齢者が利用しやすい生活保護の特徴
① 働く義務がない
高齢者(65歳以上)は、就労指導の対象外です。
身体が弱っていても安心して受けられます。
② 医療費が無料(医療扶助)
通院・手術・入院など、原則すべて自己負担なしで医療を受けられます(指定医療機関)
③ 住宅扶助で家賃の補助あり
地域ごとに上限額が決まっており、民間アパートに住むことも可能です(例:東京23区単身者で約53,700円)
④ 葬祭扶助なども完備
万が一の場合、葬儀費用(簡易火葬)も支給対象になります。
実際に利用した高齢者の声
「年金だけでは家賃と薬代で毎月赤字。受けたことでようやく“普通の暮らし”が戻ってきました。」(70代・男性)
「生活保護を受けたらご近所の目が気になっていたけど、何も変わらなかった。思い込みだったのかもしれません。」(60代・女性)
高齢期に備えるべきこと
現役世代でも、将来に向けて次のことを考えておく必要があります:
- 年金だけに頼らない生活設計(副収入・支出の見直し)
- 家族との関係性・介護リスクへの備え
- 制度を知っておくことの重要性
特に「家も資産もない高齢単身者」は、生活保護を使うことで老後の不安が大きく軽減される場合があります。
まとめ|生活保護は“最期まで生きる”ための制度
- 年金だけでは生活が苦しい高齢者が増えている
- 生活保護は高齢者の「権利」であり、約半数が高齢世帯
- 働く義務なし/医療費無料/家賃補助ありで安心
- 恥ではなく、自立と尊厳を守る制度として活用を
誰もが老いる時代、生活保護は「特別な人」のものではありません。
それは、すべての人の“人生の最期まで安心して暮らすための備え”なのです。