生活保護を受給するには?申請の手順・対象者・流れを徹底解説

「生活が苦しい」「働けなくなった」「支援を受けたい」と思っても、生活保護の申請には不安や迷いがつきものです。本記事では、生活保護を受給するための具体的な申請手順、対象者の条件、申請後の流れまでを専門的かつ分かりやすく解説します。

生活保護とは?

生活保護とは、生活に困窮する国民に対して、国が最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。日本国憲法第25条に基づき、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するために、生活保護法に基づいて運用されています。

制度の根拠日本国憲法第25条/生活保護法(1950年施行)
運用主体市区町村の福祉事務所(行政機関)
目的最低生活の保障と自立支援

どんな人が対象になるの?生活保護の受給条件

生活保護は「資産・収入・能力・扶養の4原則」に基づいて支給の可否が決定されます。以下はその主な条件です。

① 資産がない

  • 預貯金がない、または極めて少ない
  • 所有している不動産が自宅のみ(売却不能)
  • 車の所有が原則禁止(例外あり:障害・通院目的など)

② 収入が最低生活費以下

厚生労働省が定める「最低生活費」と比較して、世帯収入がそれを下回る場合が対象になります。最低生活費は地域や家族構成によって異なります。

③ 働く能力がある場合は活用

  • 働ける年齢・体力のある人には「就労指導」が入る
  • 病気・障害・高齢などで働けない場合は除外される

④ 扶養義務者の援助が受けられない

親・子・兄弟などからの仕送りや援助が期待できない場合が前提になります。ただし、必ず扶養を受けなければならないわけではありません。

生活保護の8つの扶助(支援)内容

受給が決定すると、下記のうち必要な扶助が支給されます。

扶助の種類内容
生活扶助食費・衣料費・光熱費など日常生活に必要な費用
住宅扶助家賃・敷金・共益費など(上限あり)
教育扶助義務教育に必要な学用品費・給食費など
医療扶助医療費の全額(指定医療機関のみ対象)
介護扶助介護サービスの利用費用(要介護認定が必要)
出産扶助出産にかかる費用(分娩費など)
生業扶助就労に必要な技能習得費・通勤費など
葬祭扶助死亡時の火葬料・葬儀代など

生活保護の申請手順

生活保護は「申請主義」です。自ら申請しない限り、行政から自動的に保護されることはありません。以下に具体的なステップを解説します。

STEP1:福祉事務所へ相談予約(または直接訪問)

  • 居住地を管轄する市区町村の「福祉事務所」または「生活支援課」に連絡
  • 事前予約を勧められるケースが多い

STEP2:事前相談・ヒアリング

現在の生活状況や困窮状態、収入・支出・資産・家族構成についての聞き取りが行われます。持参が求められる主な書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類(マイナンバーカード・保険証など)
  • 家計状況がわかるもの(通帳、給与明細、公共料金の領収証)
  • 賃貸契約書(持ち家であれば固定資産税納税通知書)
  • 病状・障害の診断書(必要に応じて)

STEP3:申請書の提出

正式な「生活保護申請書」を提出します。署名捺印をして、福祉事務所に提出することで、申請が受理されます(窓口で配布)。

STEP4:家庭訪問・調査

ケースワーカーが自宅訪問を行い、生活状況や家財・持ち物などを確認します。虚偽申告がないかもチェックされます。

STEP5:扶養調査・収入調査

親・子・兄弟などに対して扶養の可否を確認する通知が送られます(必ずしも仕送りを要求するわけではない)。また、年金・手当・アルバイトなどの収入もすべて調査対象となります。

STEP6:決定通知(原則14日以内、最長30日以内)

  • 受給決定 → 翌月または当月分から支給開始
  • 却下 → 不服申し立て可能(行政不服審査法に基づく)

申請から受給までの流れまとめ

段階内容
① 相談福祉事務所へ相談または電話予約
② ヒアリング生活状況の確認・必要書類の案内
③ 申請生活保護申請書を提出(署名・捺印)
④ 調査家庭訪問・収入確認・扶養調査
⑤ 決定原則14日以内に結果通知
⑥ 支給認定された場合、月1回の現金支給

生活保護の申請でよくある誤解

「働いていると受けられない?」

実は働いていても、収入が最低生活費を下回っていれば受給可能です。いわゆる「ワーキングプア」状態でも生活保護を受ける人は少なくありません。

「親がいると受けられない?」

親がいても、経済的援助が受けられない場合や、すでに高齢で自立している場合などは、保護の対象になります。

「持ち家があるとダメ?」

自宅の売却が困難で、生活手段として必要な場合は、持ち家でも受給できるケースがあります(住宅扶助は対象外になることも)。

申請をためらう方へのメッセージ

生活保護は「最後のセーフティネット」であると同時に、「憲法で認められた正当な権利」です。制度に対する偏見や自己否定感から、申請をためらう方も多いですが、苦しい時に手を伸ばせる制度があることを、どうか思い出してください。

一時的な利用でも構いません。まずは一歩を踏み出して、生活を立て直すための「時間と環境」を確保することが大切です。

まとめ|生活保護は“誰かのため”でなく“あなたのため”の制度

  • 生活保護は、自立支援のための国の制度
  • 収入・資産・扶養状況などの条件をクリアすれば誰でも申請可能
  • 申請から決定まで平均2週間程度、受給開始後も継続的なケースワーク支援あり
  • 「遠慮」や「申し訳なさ」は不要、法的に守られた正当な権利

もし生活に行き詰まりを感じているなら、ぜひ一度、福祉事務所に相談してみてください。あなたの暮らしを守る制度が、そこにあります。

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