2025年6月27日、最高裁は国と自治体が2013~15年に行った生活保護費の引き下げ処分について、「違法」とする判決を下しました。この判断は、約12年前に実施された減額措置に関し、生活基盤を脅かされた受給者へ正当な救済が行われる画期的な判決です。
なぜ問題になったのか?背景と争点
- 2013~2015年、政府は物価下落に合わせて生活保護費を減額。
- しかし一部の自治体では、その後も生活費基準の見直しが行われず、実質的に減額が継続。
- 生活が苦しい受給者らが「減額処分は違法」と提訴し、最高裁まで争われました。
争われたポイント
- 減額処分が法的根拠を欠いていたのではないか。
- 引き下げによって「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされないか。
最高裁判決の要点
- 最高裁は、引き下げが「法律の趣旨や制度の目的」に反すると判断。
- ただし、被告となった国や自治体に対し「追加賠償」を命じることはしないとの結論に。
つまり、減額処分は違法と認定されたものの、受給者が直接「お金を返せ」と国に強制できるわけではないという見解です。
救済措置・注目すべき対応
1. 元の支給基準へ復帰
違法判決を受け、対象者の生活保護費は、2012年基準に戻す対応が進みます。
2. 減額された分の“差額支給”を求める動き
判決を受け、原告や支援団体は未支給分の支払いを厚労省に要請しています。
3. 自治体ごとの対応が鍵
実際の支払い実務は自治体に委ねられており、対応時期や条件は地域によって異なります。
制度利用者への影響と救済範囲
- 2013~15年に減額され続け、その後も支給基準が戻されなかった受給者。
- 数年間にわたって毎月数千円~1万円程度の生活費を減らされ続けていた家庭。
特に高齢者や障害者など、既に生活に余裕がない層への負担は深刻でした。
実際の影響イメージ
期間 | 減額額(民間例) | 影響 |
---|---|---|
2013年〜2025年 | 月額5,000円減(仮定) | 12年間で72万円の支給不足 |
※具体的な減額額は地域により異なります。
なぜ「賠償は命じない」のか?最高裁の理由
- 判決では制度設計上の違法性を認めるが、「個別の損害・因果関係」が明確でない場合、国の賠償責任は否定可能。
- 今後の訴訟では、原告が「実際にいくら困ったか」「いつ減額されたか」を示す必要があります。
支援団体や市民が今できること
- 減額分の支払いを自治体に申し入れる(厚労省要請もあり)
- 個別の差額請求訴訟で具体的損害を示す
- マスメディアやSNSで現場の声を共有する
- 次の国政・自治体選挙で「生活保障」の改善を訴える
専門家のコメント(朝日新聞・連載より)
「物価高騰が続く中、最低生活費をめぐる判断基準が曖昧なままだった。これは制度設計の根幹に関わる問題だ」と専門家は指摘しています。
また、相談会現場では「支給額では生活できない」と訴える高齢利用者の姿も報告されています。
今後に向けた課題と方向性
- 制度改定:物価・物価下落の基準設定の透明化が必要。
- 救済手続きの整備:減額の申請者が差額をスムーズに受け取れる仕組み。
- 自治体間の対応格差:全国一律の対応基準の必要性。
- 相談窓口の強化:SNSや電話相談の利用促進。
- 生活保護の制度理解促進:偏見軽減と制度の正しい認識を広める。
まとめ:判決は“第一歩”だが、制度改善へ期待も
- 最高裁は生活保護費の引き下げが違法と判断。
- 救済措置として減額分の支払いが今後自治体で検討される。
- 賠償請求は個別裁判が必要で、まだ実現していない。
- 今後の焦点は「自治体対応」「申請しやすい制度」「受給者理解の浸透」です。
- 日本のセーフティネットの信頼を取り戻すには、制度の透明性と迅速な対応が不可欠です。
今回の判決は、制度設計の不備や本来の精神(「憲法25条の保障」)を問う転機となります。
一人でも多くの人が適切な支援を受けられるよう、今後の議論と制度改善が求められています。